在宅ホスピスへの取り組み
ホスピスは、癌、難病、慢性疾患終末期に、身体的・精神的苦痛を取り除きながら、限られた時間をより人らしく、自分らしく生きるための支援です。症状が進行性に悪化して行く時期ではありますが、痛み、苦痛をうまく管理し、様々な社会的資源、医療的援助を利用しながら、ご本人やご家族にとってより満足度の高い時間を送ることができるように支援することが重要です。いくつかの病院で入院でのホスピスも可能になってきていますが、やはり本当の安らぎの場は家族にいつも囲まれたご自宅ではないでしょうか。ご自宅でも様々な保存的治療は、入院と同程度に可能です。ホスピスというというのは、よりよく生きるためのサポートであって、死を待つだけの場所ではありません。人生のこのような時期においても、ご自宅でお過ごしになることが人間らしく最後まで生きることの基本であると考えます。

多くの方の場合、退院後大変な思いをしながら通院し、通院できない状態になってから、入院しても治療はないと言われ、あるいは、家族が24時間付き添うようにいわれ、私たちのところにご相談にいらっしゃる方が多いのですが、ご自宅でよりよい時間を過ごすためには、ご自身の生活に応じた身体的サポート、精神的サポート、福祉器具・ヘルパー派遣などのハード面でのサポートが必要で、お体の状態のある程度良い時期からご相談いただくことが大切だと思います。

69歳 女性 胆嚢癌 末期

 1年前に胆のう癌と診断され、入院治療をしていたが、余命僅かと宣告され、家に戻りたいとの希望強く、退院後在宅診療が開始された。

 家族構成:夫、娘と3人暮らし

 退院時状況:がん告知 済、PTCD挿入中、MSC服用中

退院後本人・家族の考え方、希望などを聞きながら、治療計画を作成。約1ヶ月は痛みもなく、食事も自力で摂取していたが、徐々に食欲低下、全身衰弱、不眠、腹部痛、全身倦怠感を訴えるようになった。2週間後、経口での痛みのコントロール不良と判断、また、脱水による倦怠感などの改善を目指し、CVカテーテルを自宅で挿入(ポンプ装着)。同時に、モルヒネの持続静注(PCA)を開始。医師の訪問1日2回、看護師の訪問1日3回のペースで行い、痛み苦痛のコントロールを最優先に、本人・家族と相談しながら決定。その後、肝不全に伴う意識障害出現、家族に対し死に至るプロセスの説明などを繰り返し行う。永眠前夜、家族3人が同じ部屋で休み、最後の夜を過ごす。痛み苦痛はほとんど認められなかった。明け方、夫、娘の見守る中、静かに永眠された。呼吸停止との連絡を受け、医師・看護師が訪問、死亡確認を行った。

  家族の印象:自宅で過ごせたのは短い間だったが、苦しむようなこともなく、息を引き取るときも医師から聴いていたような経過で、取り乱すこともなく看取ることができ、本人も長い闘病生活の最後に自宅に戻れて本当によかったと思っていると思う。

在宅ホスピスでできること

1. 身体的治療 :手術や大きな機械を使用した検査以外の内科的治療は在宅で可能です。具体的にはこちらご覧ください。

2. 精神的治療 :ご本人・ご家族の不安に対するサポートの基本は、ゆっくり話し合うと言うことだと思います。在宅医療では、病院の外来や忙しい病棟に比べて時間に余裕があり、治療や処置をしながら、いろいろなお話しを聞かせていただくことが可能です。

3. 家族のケアー :在宅医療ではご家族の協力も不可欠で、私たちと一緒に医療に参加していただくことが多いのですが、その中で、ご家族の考え方、ご希望、不安なども共に考える時間が十分にあると考えております。また、ご家族を亡くされた後、残されたご家族とも連絡を取り、様々なご相談に対応することができます。私たちも大切な方を亡くされたご家族同様、思い出を共有していきたいと考えております。

4. 福祉用具・ヘルーパーなどの福祉サービスのアレンジ :ご本人・ご家族の希望をお聞きしながら、日々変化する症状に応じた福祉用具や介護職員(ヘルパー)の手配などをすることが可能です。